HSF-PARP13-PARP1複合体はDNA修復を促進し、その阻害は乳がんの腫瘍形成を抑制する
The HSF1-PARP13-PARP1 complex facilitates DNA repair and promotes mammary tumorigenesis. Fujimoto M, Takii R, Takaki E, Katiyar A, Nakato R, Shirahige K, and Nakai A.
Nature Communications 8, 1638, 2017. DOI: 10.1038/s41467-017-01807-7
わたしたちのからだの細胞の遺伝情報であるDNAはたえず様々な損傷を受けると同時に、いくつかの修復機構によって安定に保たれています。しかし,DNAが不安定化してその異常が蓄積するとがんを発症します。そして、その後のがんの進展はDNA修復機構の働きに支えられています。特に、BRCA1遺伝子の変異をもつ乳がんはDNA修復機構に強く依存していることが知られています。今回、我々は、DNA修復に必要な新しいタンパク質複合体であるHSF1-PARP13-PARP1を見出しました(図1)。さらに、この複合体ができない条件下では、マウスでのBRCA1変異乳がん細胞の腫瘍形成が顕著に抑制されることも明らかにしました。したがって、この複合体の発見は、がんの治療薬の開発に結びつく可能性があります。
図1 PARP1の染色体への結合とDNA損傷に伴う再分布
通常条件下では,染色体DNAに結合するHSF1がPARP13を介してPARP1をあらかじめ全染色体上に留めておく。DNA損傷によりPARP1がPAR化活性を獲得し,自らをPARP化することで解離し,DNA損傷部位へ再分布する。あらかじめ三者複合体を作ることが,PARP1のDNA損傷部位への集積に必要である。PARP1は、DNA修復因子群をひき寄せることで修復を促進する。
山口大学広報からプレスリリースを行い、2017年11月22日(水)に中国新聞、27日(月)にNHK山口テレビ、NHK山口NEWS WEB、29日(水)に日本経済新聞、等で報道されました。